尖閣諸島中国漁船衝突事件

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2010年12月11日 (土) 21:56時点におけるFromm (トーク | 投稿記録)による版 (中国政府の報復措置)

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仙谷由人中国外務省姜瑜(Jiang Yu)報道官

尖閣諸島中国漁船衝突事件(せんかくしょとうちゅうごくぎょせんしょうとつじけん)とは、2010年9月7日午前、中国漁船が日本領海である沖縄県尖閣諸島付近で違法操業し、その後日本の海上保安庁巡視船に衝突してきたことに端を発する一連の事件。尖閣漁船事件中国漁船衝突事件とも呼ばれる。

事件の概要

2010年9月7日、尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた巡視船「みずき」が、中国籍の不審船を発見し日本領海からの退去を命じるも、それを無視して漁船は違法操業を続行、逃走時に巡視船に衝突を繰り返し巡視船2隻を破損させた。海上保安庁は同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕し 、取り調べのため石垣島へ連行し、船長を除く船員も同漁船にて石垣港へ回航、事情聴取を行った。9日に船長は那覇地方検察庁石垣支部に送検された。(#事件発生から逮捕・送検まで)

中国政府は「尖閣諸島は中国固有の領土」という主張を根拠に、北京駐在の丹羽宇一郎大使を呼び出し、日本側の主権に基づく司法措置に強硬に抗議し、船長・船員の即時釈放を要求した。これを受けて13日に日本政府は船長以外の船員を中国に帰国させ、中国漁船も中国側に返還したが、船長に関しては国内法に基づいて起訴する司法手続きの方針を固め、19日に勾留延長を決定した。すると中国側はこれに強く反発し即座に日本に対して様々な報復措置を実施した。(#送検から2度目の勾留延長決定まで#中国政府の報復措置)

24日、国際連合総会開催中で菅直人内閣総理大臣および前原誠司外務大臣不在の中、那覇地方検察庁鈴木亨・次席検事が船長の行為に計画性が認められないとし、また日中関係を考慮したとして、中国人船長を処分保留で釈放すると突如発表。本決定を仙谷由人官房長官は容認。25日未明、中国側が用意したチャーター機で、中国人船長は石垣空港から中国へと送還された。(#船長の釈放)

11月1日、中国への配慮から非公開となっていた漁船衝突時の動画が、那覇地検によって6分50秒に編集された上で、衆参予算委員会所属の一部の議員に対してのみ限定公開された。11月4日、ハンドルネーム「sengoku38」によって漁船衝突時に海上保安官が撮影していた44分間の動画がYouTube上に流出した。(#漁船衝突映像の限定公開と流出

事件の経過

タイムテーブル

  • 2010年9月7日 - 中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突
  • 2010年9月8日 - 中国大使館職員が船長に面会
  • 2010年9月9日 - 石垣海上保安部が船長を、公務執行妨害容疑で那覇地検石垣支部に送検
  • 2010年9月10日 - 那覇地検石垣支部が船長の勾留の延長を請求
  • 2010年9月13日 - 船長以外の船員を帰国させ、漁船を解放
  • 2010年9月16日 - 前原誠司国土交通相は石垣海上保安部に行き、巡視船艇の係留所を視察
  • 2010年9月19日 - 石垣簡易裁判所は逮捕された中国人船長の拘置期間を10日間延長し、20日から29日までとする。
  • 2010年9月20日 - 19日から20日にかけて中国政府が日本に対する複数の報復措置を実行する。  
  • 2010年9月22日 - 早朝、中国首相から釈放要請があり、同日午前、検察首脳会議を24日に行うことが決定された
  • 2010年9月23日 - 外務省職員が仙谷官房長官の了解のもと那覇地方検察庁へ出向き説明
  • 2010年9月24日 - 午前10時、検察首脳会議が開催され釈放が決まる。那覇地方検察庁が船長を処分保留で釈放と発表
  • 2010年9月25日 - 未明に中国のチャーター機で石垣空港から出国し、中国人船長は中国福建省福州の空港へと送還された
  • 2010年10月21日 - この事件で損傷した巡視船「みずき」が修理を終え、試験運転を開始
  • 2010年11月1日 - 6分50秒に編集された漁船衝突時の映像が、衆参予算委員会所属の一部の議員にのみ限定公開される。
  • 2010年11月4日 - 44分に編集された漁船衝突時の映像が、「sengoku38」によってYouTube上に流出する。
  • 2010年11月9日 - 巡視船「みずき」が復帰、「よなくに」も年内復帰に目処。政府ではこの船の修理代を中国へ請求することを決定
  • 2010年11月10日 - 43歳の海上保安官が、自らが「sengoku38」だと名乗り出る。15日には映像の秘密性は低いとして逮捕は免れ、書類送検される。
  • 2010年11月26日 - 尖閣事件処理に対する不満も一因となり、仙谷官房長官と馬淵国交相に対して参議院で問責決議案が可決された。問責可決以後は、当該閣僚は国会答弁できなくなるのが通例。

事件発生から逮捕・送検まで

海上保安庁によれば、9月7日午前10時15分頃、尖閣諸島最北端に位置する『久場島』北西約12キロの付近の海域をパトロールしていた、第十一管区海上保安本部所属の巡視船「みずき」が不審船(中国籍のトロール漁船『晋漁5179』)を発見し、日本の領海で違法操業をしている漁船に退去命令を出した。しかし漁船はこれを無視して違法操業を続行、揚網後に漁船の舳先を巡視船「よなくに」に向けつつエンジンの出力を上げて増速、「よなくに」の左舷後部に衝突して、そのまま逃走を開始した。これを受けて「みずき」が逃走する漁船に対して追跡を開始し、並走して停船を命令するも、漁船は「みずき」の右舷に船体を衝突させて逃走を図り、2隻を破損させた。海上保安庁はこのときの様子をビデオに撮影している。海上保安庁は8日にこの中国漁船を停船させ、同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕し、石垣島へ連行した。船長を除く船員も同漁船にて石垣港へ回航、事情聴取が行われた[1]。捜査関係者は「海保職員が船長を連行する際、酒臭かった」と証言している。翌9日には、船長は那覇地検石垣支部に送検され取調べが始まった。

本来なら、外国船舶が領海内で違法操業や目的のない徘徊をしている疑いがある場合は、「外国人漁業の規制に関する法律」違反や「領海等における外国船舶の航行に関する法律」違反等の疑いがあるとして、漁業法に基づいて停船を命令し立入検査の実施を求め、違反していた場合は該当する法律を根拠に、逃走した場合は漁業法違反(立入検査忌避罪)によって逮捕するが、尖閣諸島の領海では中国への配慮から、例外として領海外への退去を命令するだけに収めていた。しかし今回は漁船が2度にわたって衝突してくるなど悪質なことから「公務執行妨害」での逮捕となった。なお、この際、尖閣諸島領海内で100隻程度の中国漁船が領海へ出入りを繰り返し違法操業をしていたことが明らかになっている。

この日本側の動きに対して中国政府の外務報道官は、「日本は司法にのっとって即時に船長を安全に解放すべきだ」と発表した。また、尖閣諸島周辺を自国の領海・領土と強調した上で、「その海域で操業していた自国の漁船に日本の国内法が適用されるなど荒唐無稽だ。非合法で効力はない」と主張・報道し、「関係海域周辺の漁業生産秩序を維持し、漁民の生命・財産を保護する」目的として、同海域に向け漁業監視船を既に派遣したとを発表した。 この漁業監視船は農業部漁業局の「漁政201」と「漁政202」であり、7日に出航した2隻は10日から17日まで尖閣諸島の接続水域に進入・徘徊し、海上保安庁の巡視船やヘリコプター、海上自衛隊P-3C哨戒機の監視と警告を受けた。

送検から2度目の勾留延長決定まで

中国政府は「釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土」であるという根拠を元に、事件発生の日から4回にわたって北京駐在の丹羽宇一郎大使を呼び出し、日本側の措置に強硬に抗議、船長・船員の即時釈放を要求した。中国政府は呼び出しの度に、胡正躍外交部長助理(次官補)、宋濤外交副部長(次官)、楊潔チ外交部長(外務大臣)戴秉国国務委員(副総理級)と、段階的に高位の人物が対応しており、特に戴秉国国務委員による呼び出しは、12日の未明(午前0時から1時間)ということもあり、きわめて異例とされた。なお、船長逮捕当時、菅首相をはじめとして政府内では逮捕と起訴に積極的だったが、中国が抗議声明が発表したあたりから仙石官房長官らが釈放を主張し始めていたという。

また中国政府は、東シナ海ガス田問題交渉の延期を通告し、7日の農業部漁業局の漁業監視船「漁政」の派遣に続いて、中国国家海洋局傘下の海監総隊の「海監51」等2隻を周辺海域に派遣し、11日から13日まで海上保安庁の測量船と対峙し測量船の海洋調査活動を妨害した。

13日、日本政府は参考人として事情聴取をしていた船員14人を中国政府のチャーター機で帰国させ、差し押さえていた中国漁船も中国側に返還したが、船長に関しては19日に勾留延長を決定し、さらに外国人漁業の規制に関する法律違反の容疑でも調べを進め、司法手続きを続ける意思を明確にした。

政府の見解
  • 日本政府は「尖閣諸島に領土問題は存在しない」としている。前原誠司国土交通相も2010年9月14日の記者会見で「東シナ海には領土問題は存在しない」と発言し、かねての主張を繰り返した。これは2010年5月27日岡田克也外相の「尖閣に日本の領土問題はない。議論の余地はない」と述べたことを踏襲するものである。
  • 蓮舫行政刷新相は尖閣諸島を「領土問題」と述べたが、政府見解と矛盾することを指摘され、同日午後、「尖閣諸島は歴史的にも国際法上もわが国固有のものだ」と発言を修正した。このことを受け、中国のポータルサイト鳳凰網は蓮舫の経歴と出自を紹介した上で、「日本の華僑議員が尖閣諸島は日本領と発言した」と報じた。
野党の反応
  • 自民党は外交・国防部会を2010年9月15日に開き、蓮舫の発言を「とんちんかん」「勉強不足か」と批判した。佐藤正久会長は、中国側が丹羽宇一郎・駐中国大使を夜中も含めて5度も呼び出したことに対して、「外交的には極めて無礼だ」と反発。山本一太参院政審会長も中国の海洋進出の先例を挙げ、「何かあるとエスカレートさせて最後は中国が実をとる。注意しないとかなり大きな問題になる」と指摘した。
中国政府の反応
  • 国務院台湾事務弁公室の范麗青報道官は「釣魚島の主権を守ることは中台同胞の共通の利益で、中華民族の長期的、根本的な利益になる」と述べた。
日中両国の民間の反応
  • 日本国内の民間の反応に関しては、シンガポールの華字紙・聯合早報が「日本の右翼分子が9月16日と17日の両日、兵庫県の神戸中華同文学校に対して『学校を爆破する』との脅迫電話をかけ、神戸中華同文学校は警察に通報し18日午後を休校とした。」と報じている。また、神奈川県横浜市の山手中華学校にも脅迫の手紙が寄せられ、さらに同記事は「東京や大阪などの華人向けの学校でも類似の脅迫電話が相次いでいる」と報じているが、真偽のほどは不明。
  • 中国国内の民間の反応に関しては、9月8日に、中国の反日民間団体のメンバーら30 - 40人が、北京の日本大使館前で中国の国歌を歌ったり、国旗を振ったりするとともに、報道関係者に対して日本側の対応を批判する演説を行い、船長の釈放などを求めた。その上で抗議文書を大使館の郵便ポストに入れ、引き揚げた。
  • 2010年9月15日までに、中国人による北京日本大使館や日本人学校への抗議や嫌がらせが、約30件に達した事が在中日本大使館の調べで分かった。在中日本大使館によると、「広東省広州市の日本総領事館の外壁にビール瓶を投げつけられた」、「北京の日本大使館近くで車のクラクションが5分間鳴り続ける騒ぎが起こった」、「館や各地の総領事館に抗議文が約10通届いた」、「天津日本人学校への鉄球撃ち込み」などが報告されている。
  • 9月17日に、中国大手健康食品メーカーが日本への抗議行動として、予定されていた計1万人の訪日旅行ツアーをキャンセルする。

中国政府の報復措置

9月19日に検察による船長の2度目の勾留延長が決定し、日本側の船長の起訴に向けての司法方針がさらに明確になると、中国政府は即座に複数の極端な報復措置を繰り出した。中国政府は勾留延長決定の同日中に「日本との閣僚級の往来を停止」「航空路線増便の交渉中止」、「石炭関係会議の延期」及び「日本への中国人観光団の規模縮小」を決定した。 翌20日には、在中国トヨタの販売促進費用を賄賂と断定し罰金を科すと決定し。なお、中国政府関係者はレアアースの輸出差し止め措置について「日本経済の弱いところを突くような制裁を検討するように指示された」としている。 さらに21日には、ニューヨークを訪れていた温家宝首相が「われわれは(日本に対し)必要な強制的措置を取らざるを得ない」と在米華僑らとの会合で述べ、外国に対しては異例となる「強制的措置」との文言を使って日本に対して更なる報復をちらつかせ脅迫した。

また、中国農業部が主管する「中国漁業報」の20日付記事では、中国政府が今後尖閣海域での「漁政」によるパトロールを常態化させることを決定した事が報じられた。

政府・与党の反応
  • 仙谷由人官房長官は、中国の報復措置に対して「日本も中国も偏狭で極端なナショナリズムに刺激しないことを政府の担当者として心すべきだ」と述べ、中国側に冷静な対応を求めた。
  • 馬淵澄夫国土交通相は、2010年9月22日より実施されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の観光担当相会合における中国との2国間協議を取り止めた。
  • 玄葉光一郎国家戦略担当大臣は、「国内の世論対策という側面もあるのではないか。日本は法治国家なので法にのっとって対応するのが大切だ」と述べている。
野党の反応
  • 日本共産党は9月20日に「日本の領有は正当」との見解を提出している。志位和夫委員長も9月25日の第2回中央委員会総会にて、「日本の領海で、外国漁船の不法な操業を海上保安庁が取り締まるのは当然」と述べた。
地方自治体の反応
  • 9月21日那覇市議会は9月定例本会議で中国政府への抗議決議、日本政府への意見書の両案を全会一致で可決した。
  • 同日、石原慎太郎東京都知事は「中国のやっていることは理不尽で、やくざがやっていることと同じ」と述べた。石原は北京市主催の「都市問題」に関する国際フォーラム(2010年10月開催予定)に招待されていたが、「あんな国、頼まれても行かない」と、訪中を取り止めた。また、船長が釈放された24日の記者会見では、「パンダをもらって尖閣をやるのか」と政府の対応を非難した。また、「衝突時のビデオを公表するべき」と主張した。
中国政府の反応
  • 政府系シンクタンクの社会科学院日本研究所の専門家が尖閣問題にからみ日本に対する圧力のかけ方として、円資産を買い増しして円高誘導すればいいと主張している。
日中両国の民間の反応
  • 9月22日、上海体育場10月9日10日に開催予定だったSMAPのコンサートが延期が決定した(チケット販売は、販売会社より9月19日に停止)。
  • 9月23日、9月28日に海上保安庁黙認の下で日本青年社と八重山漁業組合員ら200人が20隻の魚船で尖閣諸島行く予定が、首相官邸の指示により出港停止措置となった。
  • 9月23日に、中国のニュースサイト環球網が実施したオンライン・アンケートでは、「あなたは、中国が軍艦を派遣して釣魚島を巡視することに賛成ですか?という質問に対して、「賛成」が98.2%、「不賛成」が1.8%という結果が出た。

船長の釈放

これらの中国政府の措置を受けて、9月24日、「国内法で粛々と判断する」と発言していた菅直人首相と前原誠司外務大臣が国際連合総会出席への外遊で不在の中、那覇地方検察庁が勾留延長期限が5日残っている時点で、「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮して、船長を処分保留で釈放する」と発表した。これにより、船長は「不法上陸」扱いとなり、入国管理局国外退去の手続きをし、翌25日未明に中国のチャーター機で中国へと送還された。船長は帰国した際、Vサインであいさつし、現地マスメディアに対し尖閣諸島は中国領であり自身の行為は合法である旨を主張し英雄扱いされた。10月20日には地元福建省泉州市の道徳模範に選ばれた。

仙谷由人官房長官は、船長の釈放は検察独自の判断でなされたと述べ、これを容認する姿勢を明らかにした。また柳田稔法務大臣と同日昼すぎに会談していたことに関しては「全く別件だ」と釈放決定との関与を否定し、「日中関係は重要な2国間関係だ。戦略的互恵関係の中身を充実させるよう両国とも努力しなければならない」と中国との関係修復を努める考えを示した。また釈放決定に対し民主党など政権内部からも批判が出ていることについては「承知していない」と述べた。 国連総会でアメリカ滞在中の菅首相は、「検察当局が国内法に基づいて粛々と判断した結果と承知している」と述べ、野党や国民の間から「弱腰外交」との批判が出ている事については、「(今回の事件の対応は)歴史に耐えうるものだ」と発言した。また同じくアメリカ滞在中の前原外務大臣は、釈放の一報について、深夜に秘書官から電話があって起こされ知ったと発言した。

このように政府は、船長の釈放について「検察独自の判断」を強調しているが、実際には政府の意向による面が強く、菅首相も前原外務大臣も釈放決定を事前に知っていたという。そして国連に出かけている菅首相や前原外務大臣ではなく、特に仙谷官房長官の意向が強かったと指摘されている。検察では当初、船長の起訴は可能という判断であり、勾留延長をするなど起訴に向けて動いていたが、24日午前の閣議の後、仙谷官房長官が柳田法務大臣に船長の釈放を指示し、さらに大林宏検事総長の指示の下、那覇地検による釈放の発表になったという。その一方で、前原外務大臣を除いた外務省政務3役(副大臣政務官)は、事前に釈放の話しは全く知らされていなかったという。

船長の釈放を受けて、中国側は改めて日本に、事件についての謝罪と賠償を求める声明を発表。これに対し日本政府は「中国側の要求は何ら根拠がなく、全く受け入れられない」とする外務報道官談話を出した。これに対して中国側は「日本の行為は中国の主権と中国国民の権利を著しく侵犯したもので、中国としては当然謝罪と賠償を求める権利がある」と反論している。

この間にも中国政府は尖閣周辺海域に船舶を派遣しており、東シナ海ガス田に「海監51」等の10隻以上の調査船を前例のない規模で集結させた。また、24日の自民党外交部会では、既にガス田「白樺」に掘削用ドリルパイプが持ち込まれ、日中の合意違反である中国の単独掘削が開始された見込みであることが明らかになった。さらに、24日から10月6日まで、再び「漁政201」と「漁政203」が魚釣島の接続海域内に進入・徘徊し、魚釣島の周辺を半円状に何度も往復し、海上保安庁の巡視船やヘリコプター、P-3C哨戒機による監視と警告を受けた。これは事件発生以来2度目の「漁政」の接続水域内への進入となる。9月29日には「漁政」が初めて尖閣諸島最東端の大正島の接続水域内にまで進入し、中国メディアは歴史的偉業と報じた。

9月29日細野豪志が「個人的な理由」で中国を訪問した。これについて菅首相や前原外務大臣は政府は関わっていないと発言していた。しかし毎日新聞11月8日朝刊において、仙石官房長官が尖閣沖問題で、民間コンサルタントである篠原令に中国との橋渡しを依頼し、その結果、細野と篠原らが戴秉国国務委員らと会談し、「衝突事件のビデオを公開しない」、「仲井真沖縄県知事の尖閣諸島視察を中止する」という密約を結び、これに仙谷官房長官が同意した事が報じられている。この際、ブリュッセルASEMでの10月4日の菅首相と温家宝首相との25分間の「交談」がセッティングされたと見られている。

与党の反応
  • 民主党では、平野博文前官房長官が、勾留延長の途中で釈放決定がなされたことについて、「どういう理由なのか、はっきり説明しないといけない」と述べ、岸本周平は、「中国と領土争いをしている多くの東南アジア諸国は日本に失望したことでしょう。アメリカを含め、彼らと共同戦線を保つことでしか、中国の領土的野心には対抗できない日本にとって最悪の結果です」と批判した。別の幹部も「菅も仙谷も、外交なんて全くの門外漢だ。恫喝(どうかつ)され、慌てふためいて釈放しただけ。中国は、日本は脅せば譲る、とまた自信を持って無理難題を言う。他のアジアの国々もがっかりする」と述べた。
  • 2010年9月29日、「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」の準備会合が国会内で開催された。原口一博岩屋毅両氏を共同座長とすることを決めた。民主・自民両党の有志議員に衆院会派「国益と国民の生活を守る会」の城内実氏を合わせ約10人が出席。
  • 民主党の元代表である小沢一郎は、この事件への対応について「僕がもし、政府の責任者だったら、船長を釈放しませんね」と発言している。また、船長を釈放したのは那覇地方検察庁の判断だとする政府説明について、小沢は「検察に政治的判断をさせるのはどうかな」と疑問視する考えを示すとともに「政治主導というなら政治家が責任を持って最後は判断しないと駄目だ」と批判している。
  • 国民新党では、亀井静香代表が「政治が介入したとしか思えない。事実上の指揮権発動だ」と指摘した。亀井亜紀子政調会長も、「釈放には政治的判断が働いたと考えざるを得ない」と述べた。
野党の反応
  • 自由民主党では、谷垣禎一総裁が、「(中国人船長を)直ちに国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違っていた」と主張し、那覇地検が釈放理由として日中関係への配慮などを挙げたことについて「捜査機関が言うべきことではない」と述べた。安倍晋三元首相も、釈放は菅内閣の判断によるものとして、「極めて愚かな判断だ。中国の圧力に政府が屈した」と批判した。山本一太参院政審会長は、「政府は弱腰外交との批判を恐れて、検察に責任を押し付けようとしている」と非難した。
  • 公明党では、山口那津男代表が、「日中関係をこじらせることは誰も望んでいない」「釈放は一つの転機になる。法的な主張をぶつけ合うより、政治的な解決をしていく場面に転じた。釈放判断は必ずしも否定するべきではない」と評価した。一方、高木陽介幹事長代理は「国内法、領土を守るという国家として当たり前のことを放棄した」と指摘した。
  • みんなの党では、渡辺喜美代表が、「明白な外交的敗北だ。菅内閣の弱腰外交を糾弾しなければならない」と述べた。
  • 日本共産党では、志位和夫委員長が「国民に納得のいく説明を強く求める」との談話を発表した。
  • 社会民主党では、福島瑞穂党首が「地検の判断を尊重するしかない」と述べた。
  • たちあがれ日本では、平沼赳夫代表が、尖閣諸島に対する中国側の領有権主張を日本が暗に認めたことにもなりかねないとの懸念を表明した。
日本の民間の反応
  • 独立総合研究所青山繁晴は、2010年9月29日放送の報道番組「アンカー」にて、検察はいかなる事件があっても発表する時には「法と証拠に基づいて、この処分決定をいたしました」と発表するが、全文の中に「法と証拠」が出てこないと指摘。つまり、今回の検察の判断は「法に基づいてません、証拠にも基づいてません」ということであると指摘した。
  • 衝突事件の現場から程近い石垣島では、漁業関係者から「怒りを通り越して気絶しそうだ」「国交を断絶してでも、(船長を)起訴すべきだった」「尖閣諸島周辺はカツオの好漁場だが、漁師は怖くて行けない」などの声があがった。また、釈放された船長が石垣空港から中国へ送還される際、金網越しに罵声を浴びせた住民もいた。
中国政府の反応

2010年9月25日に中国政府が発表した声明文の要旨は以下のとおり。

  • 日本が尖閣諸島海域で中国人漁民15人と船長を拘束し、船長を拘置したことに強く抗議する。
  • 魚釣島とその付近の島嶼は中国固有の領土である。
  • 今回の事件に対して、日本に謝罪と賠償を求める。
  • 日中両国は対話を通じて戦略的互恵関係を発展させていくべきであり、この立場は変わらない。

抗議デモ

  1. 産経新聞2010年9月8日付 夕刊より